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Technology

Technology Report #04

“光”がつないでいく
技術と想い

2030年、世界の通信量は2020年比で15倍になるとの試算がある。
来たる時代までに、光通信の能力を飛躍的に向上させる技術の開発が欠かせない。
情報通信の領域に限らない。光の特性を利用した技術には、
医療や航空宇宙など、幅広い分野で革新をもたらすポテンシャルがある。
常に世界最先端に挑み続けるフジクラの研究開発部隊が、次に目指しているものは?
光応用技術R&Dセンターを指揮する愛川 和彦が、未来への想いを語る。

CHAPTER1

光通信ネットワークに
次のパラダイムシフトを起こすものとは。

近い将来、クルマの自動運転や遠隔操作、メタバースなどが普及すれば、通信トラフィックはさらに跳ね上がっていくでしょう。時間の遅れなく光信号を伝える技術の向上も求められます。通信量の伸びにしたがって増加している電力消費量の問題に対処することも必要です。「大容量」「低遅延」「省電力」。私たちはこれら3つの社会的要請にしっかりと応えていかなければなりません。このような想いから、光通信においては多岐にわたる先進の研究開発に挑んでいます。中でも心血を注いでいるテーマの一つが、マルチコアファイバの早期実用化です。1本の光ファイバの中に光の通り道(コア)を複数配置したマルチコアファイバならば、光ファイバの外径はそのままに伝送容量を一気に増やすことが可能。まさに次代を拓く技術と言えます。光通信システムの大容量化が急がれている現在、フジクラはテレコムキャリアなどとの共同研究を推進しながら、マルチコアファイバ製品とその製造技術の開発を加速させています。

CHAPTER2

情報通信から、さらに新たな領域へ。
光がもたらす可能性は無限に広がっていく。

光の新たな可能性を求めて、フジクラの挑戦は情報通信以外の領域にも広がっています。たとえば、特殊ファイバ、半導体レーザ及び光部品の技術力を結集したファイバレーザは、切断や溶接といった金属加工用製品の事業化を経て、現在はより特殊な用途向けの開発を進めている段階です。また医療分野では、カテーテルと共に使用するファイバ型形状センサについて、さらなる細径&小型コネクタの開発を推進しています。対象は地上だけではありません。遠からず、宇宙を飛び交う人工衛星の間でも光通信を使う時代がやって来ます。フジクラはその大容量な衛星間光通信に適用できる増幅用ファイバの開発にいち早く着手。これからも研究開発対象に制限を設けることなく、光技術の可能性を創造的に開拓していく考えです。

困難に直面しても最後まで必死にもがき、粘り抜く。あきらめない精神で勝ち取ってきた成功が、私たちの誇りです。

CHAPTER3

チャレンジングなだけでなく粘り強さも、
私たちが受け継いできたスピリッツ。

「創造的に、挑戦的に仕事をしよう!そして決してあきらめない」。これがフジクラのものづくりを支えているフジクライムズですが、私の記憶に鮮明に刻まれている経験は、後者の「あきらめない精神」にまつわるものが多いように思います。欧州にCERNという世界最大規模の素粒子物理学の研究所があります。フジクラがここに耐放射線光ファイバの納入を開始したのは2006年のこと。ヨーロッパの研究機関ですから、通常ならば欧州企業の製品を調達するところですが、フジクラの製品が世界最高の性能を示したことから調達先に選定されました。他社との性能競争は熾烈を極め、敗北を覚悟した瞬間もありました。それでも、チームの士気は下がることはなく、終盤ぎりぎりにもう一段性能をアップしたことで、受注に至りました。最後の最後まで必死にもがき、粘り抜く。あきらめない精神で勝ち取ってきた世界的成功が、フジクラには少なくないのです。

CHAPTER4

光の性質をあまねく使って未来を創る。
ここでの研究開発は醍醐味に満ちている。

さまざまなモノや機械、人によるデータがインターネットにつながり、そのデータがサイバー空間で処理されて、現実世界にフィードバックされる流れは、今後より一層強くなります。そのような社会変化に呼応して研究開発を進め、製造し、お客さまに納入して喜んでいただくには、自らが成長することも大切。その点フジクラには、意欲ある技術者のための研鑽機会が豊富に用意されています。光応用技術R&Dセンターには、シミュレーションから試作、評価に必要な装置が完備されています。そんな環境を味方につけて、これまでの常識を打ち破るようなテーマに挑んでいける。光の持つ性質をあまねく使い、医療に、産業機器に、衛星通信に…と対象領域を拡大し、次の社会を支えていける。光技術の研究開発ほどエキサイティングで魅力にあふれたフィールドはないと思っています。

世界の最先端を切り拓くR&Dテーマ

高温超電導

特定の物質において、低温で電気抵抗がゼロになる現象が「超電導」。そして、希少資源でもある液体ヘリウムを用いなくても超電導現象を得られるのが「高温超電導」。近年、この「高温超電導」を活用して、従来よりも小型の核融合発電(※)を実現しようとする開発が欧米を中心に進められています。フジクラは1987年から高温超電導技術の研究開発に取り組み、世界トップレベルの技術力で、国内外に高性能なレアアース系高温超電導線材を提供、ユーザから高い評価を得ています。
フジクラは、さまざまな次世代超電導機器への貢献を通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

※核融合発電は、二酸化炭素を排出せず、その資源は海水中に豊富にあり、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決する技術と期待されています。

ファイバレーザ

光ファイバの応用分野として先駆的な研究開発に取り組んでいるのがファイバレーザです。既存のレーザに比べてビームの集光性や電力効率、信頼性などが優れ、現在、加工分野において急速に普及しつつあります。フジクラはこの分野においてもすでに世界トップクラスの技術を有し、独自の製品を開発し事業化を推進。さらに応用分野を拡大していくために、最先端の研究開発を展開しています。

マルチコアファイバ

増大する通信ニーズに対応するため、従来の限界を超えた次世代光ファイバの開発競争が世界で繰り広げられています。その中で、早期の実用化を見据えて汎用光ファイバのさらなる高密度化を実現するための研究開発として、1本の光ファイバに複数のコアを配置することで高密度化が可能となるマルチコア光ファイバの開発を中心に進めています。現在使用されている標準光ファイバと同じ太さ(125μm)に、既存のシングルモードファイバと光学的に互換な4つのコアを配置したマルチコア光ファイバを中心に研究開発を進めています。

Future

愛川 和彦Kazuhiko Aikawa

光応用技術R&Dセンター センター長 博士(工学)

1990年の入社以来、光ファイバの研究開発を中心に30年余りのキャリアを重ねてきた、この道の第一人者。2010年には研究所での成果を用い、フジクラに勤務しながら博士の学位を取得。2021年より現職に就き、通信用・非通信用の光ファイバ開発とその接続技術、並びに光ファイバ応用などの開発を統括している。

※記事内容および社員の所属は取材当時のものです。

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