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Technology

Technology Report #03

モビリティの変革を
後押しする力

「Connected(コネクテッド)」、「Autonomous(自動運転)」、
「Shared & Services(シェアリング&サービス)」、「Electric(電動化)」。
これら4つの頭文字を取った「CASE」が、クルマの概念を一変させようとしている。
自動車業界が100年に一度の転換期を迎えるなか、国内自動車産業の黎明期からさまざまなカーメーカーの技術革新を支えてきたフジクラは、どのようなスタンスでこの転換期に臨んでいくのか。
電装システム開発部トップの照沼 一郎が今後の方針を語る。

CHAPTER1

1957年から60年余り。
激動の時にこそ、しぶとく強さを発揮してきた。

「逆境をバネにして、ここから事業を伸ばしていこう!」。ドイツの現地法人Fujikura Automotive Europe GmbHで、そんな強気の方針が打ち出されたのは2010年。リーマンショック後の長引く不況のさなかでした。そこから事業拡大に向けた欧州自動車メーカーへの攻勢を始め、ほどなく業績はV字回復。フジクラの欧州ビジネスは、アジア、北南米と並ぶ柱に成長したのです。遡れば、フジクラが自動車用ワイヤハーネス(※)の製造を開始したのは1957年。参入の時期は遅まきながらも、電線分野で蓄えてきた技術力と創造性、そして何よりお客さま第一の姿勢で自動車メーカーとの間に強固なパートナーシップを構築。バブル崩壊やリーマンショック後の景気後退期を不屈の精神で乗り越え、自動車部品サプライヤとしてのポジションを確固たるものにしてきました。

※車内の各ユニットを正常に作動させるための電気経路となる配線の束。

CHAPTER2

「お客さまが欲しいものを、
欲しいタイミングで提供する」という信念。

フジクラの自動車事業部門に脈々と受け継がれてきたポリシー。それは、徹底したお客さま志向です。自動車事業部門は常にお客さまに寄り添って、困りごとやサプライヤに対する要求をしっかりと捉え、お客さまも気づいていない課題をすくい上げて、その解決方法をお客さまが求めるタイミングで提案・提供する姿勢を大切にしてきました。その象徴といえる製品が、サイドエアバッグハーネス用のケーブルです。近年は燃費向上などを目的に、車両軽量化のニーズが高まっています。そこでフジクラは、ワイヤハーネスの一部であるサイドエアバッグシステムのケーブルについても大幅な軽量・細径化を実現。車両軽量化の一助になるとともに、狭い空間に配置せざるを得なかったケーブルレイアウトの自由度も向上させました。お客さまの痒いところに手が届く、フジクラならではのソリューションだと自負しています。

徹底したお客さま志向が事業のポリシー。そこにお客さまのニーズがあるならば、売上の多寡に関わらず、実現に挑んでいきます。

CHAPTER3

お客さまとの対話を羅針盤にして、
100年に一度の大変革期を突き進む。

フジクラならではのイノベーションは、その他にも。たとえば、電気自動車(EV)の本格普及に先駆けて、超急速充電用ケーブルコネクタの量産化にも成功しています。このケーブルコネクタは未来を見据えた製品です。ただし、この製品は今すぐに大きな収益を生めるものではありません。また、前述のサイドエアバッグハーネス用ケーブルも、市場規模自体は小さく、ニッチな領域の製品です。しかし、そこにお客様のニーズやユーザーへのうれしさを提供できるのであれば、売上の規模に関わらず、開発に挑んでいくのが私たちのスタンスです。そして愚直に、ひたむきに、お客さまとの絆を深めていきたいと考えています。自動車業界は今、100年に一度の大変革期を迎えています。先行きが見通しにくい技術革新の嵐の中で、どうすれば方向を見失わずに前進していけるのか。羅針盤となるのは、やはりお客さまとの対話です。だからこそフジクラは、誠実にお客さまと向き合い、ともに手を携えて、ものづくりに取り組んでいこうと思うのです。

CHAPTER4

「オールフジクラ」の技術を活かし、
モビリティの変革を後押ししていく。

一方で、お客さまが進む方向をさだめた時、それに最適な製品をタイムリーに提供するシナリオはできています。クルマは、フジクラが持つさまざまな“つなぐ”技術を活かせるプラットフォームです。クルマと外をつなぐためには無線通信のミリ波モジュールが、自動運転にはセンサが、車内外でのより大容量のデータ通信が必要になった場合には光ファイバを使ったハーネスが役立ちます。私たちの部門だけでなく、情報通信やエレクトロニクス部門とも連携し、「オールフジクラ」の技術と体制で新たなビジネスを創っていきます。CASEがもたらす技術革新は、高齢化社会や過疎化が進む地方の課題解決などにも寄与します。従来の「自動車」から、人や地球にもっとやさしい「移動手段(モビリティ)」への大変革。その一翼を担えるこの時期に、モチベーションが上がらないはずはありません。

自動車の進化を支える電装製品

液冷ケーブルコネクタ

近年、電気自動車のバッテリ大容量化に伴って、充電時間の短縮が望まれるようになっています。フジクラはこうしたニーズに即応すべく、国内で初めて液冷方式のケーブルコネクタを開発し、市場投入しました。このケーブルコネクタは、150キロワット超級の急速充電器向け製品で、液体冷媒を循環させる仕組みによって、充電電流の増加に伴う温度上昇を抑制。高出力に対応しながら製品サイズを抑え、扱いやすさを保っています。

ハイブリッドジョイントボックス

ジョイントボックスは、車内の各装置への電源分配と回路保護の機能を担う重要部品です。フジクラは従来バスバ(電流を導電する導体)だけで構成されていた分配回路を、バスバと基板で構成したハイブリッド構造に革新。自動車の多機能化に伴い、回路が増加している中にあっても、軽量小型で信頼性の高いジョイントボックスを提供しています。

サイドエアバッグハーネス用ケーブル

ドライバーや同乗者に対する側面からの衝撃を緩和するサイドエアバッグシステムには、起爆信号を伝達するためのケーブルが必要です。フジクラはこのケーブルについて、使用する導体材料の強度を高め、樹脂材料の耐外傷性を向上させることで、従来よりも30%軽く、10%細径の製品を開発。車両軽量化への貢献ならびにケーブルレイアウトの自由度アップを実現しています。

Future

照沼 一郎Ichiro Terunuma

電装システム開発部 部長

1998年の入社以来、自動車電装の世界に身を置いてきた。ドイツの現地法人赴任中は、欧州自動車メーカーからの量産案件受注に貢献。2019年からは社長直轄の特命プロジェクトリーダーとして電気自動車用超急速充電ケーブルコネクタの開発を主導した。2022年に現職となり、製品開発及び新事業創出の陣頭指揮を執っている。

※記事内容および社員の所属は取材当時のものです。

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