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Technology

Technology Report #02

新たな地平へのチャレンジ、
それはFPCからはじまった

FPC(フレキシブルプリント配線板)はその名の通り、
自由に曲げることができ、かつ小型・軽量という特長を持つ電子部品だ。
スマートフォンから自動車まで私たちの身の回りのさまざまな製品に使われている。
フジクラは、このFPC分野において世界屈指のシェアを誇る。
しかし、そのビジネスは決して平坦なものではなかった。
チャレンジングな技術と不屈の想いを受け継ぐ伊藤 彰二がFPCの次なる可能性を語る。

CHAPTER1

メンバーたちの不屈の想いが
ついに扉を押し開いた。

「フジクラの次代を担う、新しいコアビジネスをつくろう!」。そんな熱い想いとともに、フジクラでFPCのプロジェクトが発進したのは1979年のことです。とはいっても、メンバーはわずか数名。業界では後発の、まさにゼロからのスタートでした。しばらくは赤字の年が続き、社内からはプロジェクトの存続を疑問視する声も聞かれたそうです。しかし、メンバーたちの不屈の想いがついに扉を押し開きます。持ち前の技術へのこだわり、顧客の期待を上回る自由でアグレッシブな提案。やがて世界に冠たるメーカーとのビッグビジネスを次々と成功させていきました。創造的で挑戦的なフジクライズムが発揮され、世界トップクラスのシェアを獲得し、現在へと続くフジクラのエレクトロニクス事業の基盤を築いていったのです。

CHAPTER2

先輩、そして自分たちが
創り上げてきた
FPC事業を
もう一度絶対に復活させるのだ。

高付加価値な製品開発に加えて、フジクラのFPC事業を成功に導いた戦略がもう一つあります。それは積極的なグローバル展開です。1990年代からタイを中心に次々と生産拠点を設け、業界に先駆けて海外展開を推進していきました。私自身、2回にわたり10年近くタイに駐在しています。そんなFPC事業にとって思いも寄らぬ危機となったのが2011年、タイでの洪水災害でした。私も水没した工場を目の当たりにした時は心が折れそうでした。けれども、誰一人として諦めなかった。先輩たちが、自分たちが創り上げてきたFPC事業をもう一度絶対に復活させてやろう。与えられた仕事ではなく、「自分たちの仕事」として必死に取り組んだのです。みんなが抱いているこの「当事者意識」こそが、FPC事業の大きなエネルギーだと感じています。

与えられた仕事ではなく、
「自分たちの仕事」として熱く向き合う。
この「当事者意識」が大きなエネルギーと
なっている。

CHAPTER3

自分たちの技術や発想から
独自の付加価値を生み出していく。

私が所属する第一技術部は、スマートフォンメーカーを担当しています。顧客とフジクラグループをつなぐ、営業技術のような役割です。顧客が提示する仕様や設計案に対して、こちらからも技術的な提案を行いコミュニケーションしながら実際の設計図に落とし込んでいきます。顧客は世界でも名だたる大手メーカー。当然、求められる技術や品質のレベルは高度ですが、その世界最先端の製品に不可欠な技術を担っているという自負が大きなモチベーションとなるのです。また、FPCでは、顧客や製品によって設計が異なるという「一品一様」の開発が求められます。それだけに技術者のアイデアや知恵が活かされる場面も多く、自分たちの発想から独自の付加価値を生み出せることが魅力です。活躍のフィールドが世界規模であることもFPC事業の大きな特徴でしょう。技術者たちは、もはや「グローバル」という言葉すら意識することなく、日々世界とやり取りし、海外出張しています。

CHAPTER4

フジクラの「つなぐ」技術は、
FPCから大きく広がろうとしている。

フジクラは今、「第3の創業」を掲げ、新規ビジネスの創出に果敢に取り組んでいます。私は、FPCはこのようなチャレンジの先駆けともいえる事業だと思っています。これから世界規模の競争の中でフジクラが勝ち残っていくためには、独創的な技術と柔軟なアイデアが欠かせません。FPCが使われる製品はスマートフォンから自動車まで幅広く、さらにFPCを起点にエレクトロニクスや自動車電装などフジクラの「つなぐ」技術も大きく広がろうとしています。FPCの技術をさらに深化させるとともに、チャレンジングな想いを伝え、若い技術者たちと一緒にフジクラの技術の新たな可能性に挑んでいきます。

幅広い産業で活躍する電子・電装部品

フレキシブルプリント基板(FPC)

高機能かつ小型化したスマートフォンやデジタルカメラなどに対応するため、軽薄・折り曲げ可といった特徴を持つフレキシブルな基板。片面、両面、多層板など構造はさまざまで、製品設計、開発、試作から製造まで一貫生産が可能です。
また、電子部品や付帯構造物を組み合わせることで、配線板としてだけではなく折り曲げ可能な薄型モジュールとしても商品展開しています。

超小型基板対基盤コネクタ(FBシリーズ)

フジクラの基板間接続用コネクタは、業界トップレベルの小型サイズを実現し、スマートフォンやウェアラブル機器などの携帯機器の小型軽量化に貢献。さらに、PCB(プリント基板)とFPCの接続や、FPC同士の接続に適用されるため、FPC上に当コネクタを実装したモジュールも、スマートフォンを中心に広く応用されています。

薄型配線技術応用製品開発

FPCの自動車用モジュールへの展開例として、薄型配線材技術を応用したFPCランプモジュールを製品化。主に自動車のリアコンビランプ(テールランプ)やヘッドライト内に使用されるなど、フジクラの技術は今急速に進化を遂げているモビリティへも大きく貢献しています。

Future

伊藤 彰二Shoji Ito

プリント回路事業部製品開発部
新製品開発 グループ グループ長

2000年入社。FPCの開発に携わった後、2009年から2回にわたってタイに駐在。アユタヤ工場で実装工程を担当し、洪水被害からの復興に尽力する。2018年、帰国して現職に。グループ長として若手技術者の育成にも取り組む。

※記事内容および社員の所属は取材当時のものです。

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